EURO初出場、その初戦で初勝利をあげたフィンランド。途中デンマークのエリクセンへの医療処置による中断もあり、非常に難しい状況での試合にはなったが、押し込まれる中でも身体を張った守備は最後まで綻ぶことなく見事に歴史的1勝を勝ちとった。
ところでフィンランドと聞いて、とても日本になじみがあるものをご存知だろうか。(※ただしサンタクロースとヤリ・リトマネンとミカ・ハッキネンを除いて)答えは、皆さん1度くらいは入浴したことがあるであろう“サウナ”だ。日本には1964年の東京オリンピックをきっかけで広まったとされており、先史時代には既に入浴方法の原型ができあがっていたらしい。

よく知る方々が言うには、フィンランドにおけるサウナは、日本でいうところの“湯船”に近いとのこと。そのため各家庭にサウナルームが設置されており、サウナのない集合住宅に住む者は日本の銭湯的感覚で公共サウナを利用している。近年は日本のお風呂事情同様、フィンランドでも家庭サウナの普及から一時衰退した公共サウナだが、施設の近代化や新たなビジネスモデルの模索により、再び盛り上がりを見せているようだ。例えば日本でもおなじみのハンバーガーチェーン店・バーガーキングはサウナで食事ができる店舗をオープンさせた。またゴンドラがサウナになっているという、奇抜すぎる観覧車まで登場。これが彼らフィンランド人特有のユーモアなのか、それともいたって真面目なのか。ともかく2020年にユネスコ無形文化遺産に登録されたフィンランドのサウナ文化、こちらが思っている以上に深い。


さて、フットボールサイトらしく(?)ここでサウナとフットボールの両方をよく知る人物を。現在フィンランドリーグ1部(ヴェイッカウスリーガ)のHJKヘルシンキ所属する田中亜土夢選手だ。田中選手はアルビレックス新潟から2015年にHJKへ移籍。初年度こそタイトルには届かなかったものの、シーズン11得点を記録した。更に2017年には全38試合出場9得点をあげ、リーグとカップ戦の国内2冠に貢献している。1度はセレッソ大阪への移籍で日本復帰を果たすも、2020年に再びHJKへ。そのシーズンで、またもクラブに2つのタイトルをもたらしている。

ここまで活躍できたのは「フィンランド人と日本人が似ているから」と、田中選手。控えめ性格や、話さずとも察する感覚、真面目で勤勉、規律を守るという共通点のおかげで違和感なくプレーできたという。そして、一番の理由がフィンランドサウナ。最初にヘルシンキを訪れた際、すっかりサウナのとりこになってしまい、現在ではフィンランドの文化やサウナ、フットボールを紹介するサイト『MOI SAUNA』を開設。多くのメディア取材や観光イベントを通し、両国の架け橋としてシーズンオフも精力的な活動を続けている。
最も田中選手のサウナ愛が窺い知れるのが、現在つけている背番号。最初の移籍時は新潟時代と同じ10だったが、HJK復帰の際には37をチョイス。理由は…サウナと読めるから、らしい。これは筋金入りだ。

最近のサウナブームも相まって、日本での注目が高まっているフィンランド。初の国際大会となるEURO2020での活躍次第では、フットボールでも認知されるようになるかもしれない。フィンランドと田中亜土夢選手、彼らの冒険が今後も素晴らしいものになるよう祈りたい。
※参考:
『Fika』2021/1/7 “サッカー選手・田中亜土夢が没頭する、フィンランドの本場サウナ”
フィンランド情報サイト『MOI SAUNA』
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