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隠れた名画『92年の夏』で、絶対あなたもデンマーク好きに!

デンマークのサッカー史上、最も偉大な勝利として今でも語り継がれている1992年の欧州選手権。その感動的なストーリーに基づいて実際の試合映像も盛り込んだ傑作サッカー映画を紹介します。サッカーファン必見ですよ!

タイトル:「92年の夏」(原題:Sommeren’92)

制作:2015年

時間:94分

音声:デンマーク語

字幕:日本語(英語、ポルトガル語、中国語、韓国語)

*2021年6月時点ではNetflixで視聴できます

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まずは、この大会について。1992年欧州選手権の決勝は、デンマーク対ドイツという誰も予想できなかったカードになりました。出場権を剥奪されたユーゴスラビアの代役として急遽招待されて大舞台に登場したデンマーク。そして、ドイツには絶対に勝てるはずがない…。そう思っていたのは他でもないデンマーク国民です。それが、なんと、信じられない展開に…!

この映画は本当によくできていますし、デンマーク代表を知らなくても、サッカーファンなら観て欲しい傑作です。でも、どうせ観るなら絶対に知っておいて欲しい背景があるんです…!この作品はデンマーク人ならもちろん説明不要、そして「92年のデンマーク」で話が通じるサッカーバカなら話が早いのですが、もう30年近く昔のことですよね。なので、このサイトを見てくれているアナタに、全力で紹介していきますよー。

ということで、このコラムのテーマはずばり!

【映画を観る前に知っておきたい6個のこと】

①デンマークサッカー協会がグダグダです

②あのビールがデンマークを救った

③プロ監督のもとで驚きの大躍進

④後任の監督はなぜ人気がないのか

⑤再現度が高いぞ…!

⑥そんなバカな!代表チームが絶対にやらないこと3つ

それでは、ひとつずつ紹介していきますね!

①デンマークサッカー協会がグダグダです

まずはデンマークサッカー協会(DBU)について。代表チームというのは、その国のサッカー協会が監督を決めて、その監督が選手を選考してトレーニングする、というのが普通です。しかし、当時のデンマークサッカー協会はちょっと変わっていました。

・代表選手の選考は教会の選考委員会が投票で決める

・代表チームの監督は2人体制

・選考委員会の委員長が代表チームの「戦術マネージャー」と「フィジカルマネージャー」を選ぶ

うん。意味がわからない。とても不思議な運営ですが、実際にはこれがデンマークでずっと続けていたわけです。そしてようやく1979年7月になって初めて、ドイツ人のゼップ・ピオンテックが代表チームの本当の意味でのプロフェッショナル監督として契約し、チーム選考と練習における全ての権限と責任が与えられました。ゼップは、それまでヨーロッパの小国にすぎず「アマチュアサッカー」と馬鹿にされていたデンマーク代表を初めてワールドカップに導いた偉人です。世界最高のリベロと言われていたモアキン・オルセン、華麗なテクニックを誇るミカエル・ラウドルップ、そして猛牛エルケーア・ラルセンなどのタレントを擁して「みんなでガンガン攻めまくろうぜ!」という小学生男子のような究極の戦術を3-5-2システムで実現しました。でも実はまだまだDBUの体制や考え方は旧態依然のままです。

②あのビールがデンマークを救った

そもそも、アマチュアまるだしのDBUがなぜ有能なドイツ人監督を雇うことができたのか。この背景には有名なビール会社があるのです。それは、みなさんご存知カールスバーグ。そうです、デンマーク王室御用達としても知られるビール醸造会社ですが、1978年にデンマーク代表チームのスポンサーになりました。いいぞ金持ち!おかげでデンマーク代表チームにも使える資金ができて、初めてプロの外国人監督と契約できたのです。日本代表とキリンさまの関係にも似ていますね。僕はサッポロ派です。

③プロ監督のもとで驚きの大躍進

ゼップの指導により、デンマークは強くなっていきます。まずは1984年欧州選手権の地域予選から。第3組の初戦で、なんとデンマークはイングランドと2-2の引き分け!ホームとはいえ、まさかの大健闘。さらにルクセンブルクとのアウェーゲームに勝利、ギリシャもホームで1-0で破って、1983年9月21日にロンドンに乗り込みます。この試合ではイングランドの攻撃に耐えしのぎ、シモンセンのPKで0-1の勝利。テレビ放送はデンマーク総人口の80%にあたる400万人が視聴したのです。予選を6勝1分1敗でトップ通過したのは驚きでした。本大会では、リヨンでの準決勝でスペインと戦い、1-1のスコアからPK戦でエルケーア・ラルセンが失敗して敗退しましたが「デンマークすげえ」という空気がサッカー界に吹き荒れます。そして今もなお語り継がれる1986年W杯での活躍。もうアホみたいな攻撃力で南米の古豪ウルグアイを6-1とぶっ飛ばし、当時ヨーロッパ最強だった西ドイツもやっつけてグループリーグ1位通過。あまりにも大番狂わせすぎる。しかし、3バックの欠陥でもある「ウィングバックの裏を突かれたら即死」のわかりやすい実例として、決勝トーナメント1回戦でスペインに1-5とボロ負け。ブトラゲーニョにやられました。あと「アステカめっちゃ暑かった」うん、好き。とにかく北欧の弱小国デンマーク代表が、世界中に大きなインパクトを残しました。

④後任の監督はなぜ人気がないのか

いやアナタ、考えてみてくださいよ。もしハンス・オフトがドーハで勝って94年W杯アメリカ大会に出場していたら、そりゃもう国民的英雄だったはず。そのあと実際に日本を98年フランスW杯に導いた岡田監督が地味なのにめちゃくちゃ人気あったし、つまり「弱小国を国際舞台で輝かせた名将」は間違いなくヒーローなのですが、問題はそのあとです。ニールセン監督はデンマークU-21代表も指揮していたし、フル代表でもゼップ監督を補佐する有能コーチだったのですが、要するに「独創的な発想もない、魅力がないデンマーク人のおじさん」なのです。とにかく地味。そしてサッカーは守備的でイレブンの規律を重んじるタイプです。守備なんか知るか!ガンガン攻めまくれ!でうまくいったドイツ人の後任ですから、そりゃ人気ないわー。

⑤再現度が高いぞ…!

この映画の優れているポイントのひとつですね。役者さんがよく似ているのです。まず、ニールセン監督はかなり雰囲気が近い!演じたのはウルリク・トムセンという、そこそこ有名な俳優さん。主な出演歴は

  チャーリー・モルデカイ:チャーリーに騙されるマフィアのボス

  ヒットマン:ロシアの悪い大統領

  007 ワールド・イズ・ノット・イナフ:ボンドに撃ち殺されるテロリスト

わぁ、悪役ばかり…。

劇中、ニールセン監督を演じるウルリク・トムセン。
実際のニールセン監督。西ドイツを破り、欧州最強の栄冠に輝いた直後の様子。

あと、キム・ヴィルフォルトも雰囲気がけっこう似てますね。イェンセンは、ええと、パーマヘアだけバッチリ再現。ブライアン・ラウドルップとピーター・シュマイケルは、役者のほうがイケメンかなぁ。

しかし!映画のなかでいちばん再現度が高いのは、準決勝オランダとのPK戦、クリストフテの歓喜クルクル回転!このシーンがいちばん似てます!マジで必見!

⑥そんなバカな!代表チームが絶対にやらないこと3つ

元々世界中の誰も(本人たちも)活躍すると思ってなかったデンマーク代表。大会前の準備も万全ではなく、当然ですが勝ち上がるに連れて疲労も蓄積していきます。フィジカルだけでなく、メンタル面でもコンディション低下に苦しむ選手たち。そんななかで、堅物のニールセン監督が驚きの行動に出ます。まさか決戦を直前に控えて、そんなことするかー?とビックリの秘策が炸裂しちゃいます。

その①:練習を突然オフにして◯◯◯

その②:坊有名チェーン店で◯◯◯◯◯◯を食べまくる

その③:奧さんや彼女が宿泊先に来たら◯◯◯◯…

これらの真相は、ぜひ映画を観て欲しいと思います。そして、ラスト18分間のスペクタクルを楽しんでください。デンマーク国内で嫌われまくっていたニールセン監督の名スピーチ、そしてダニッシュ・ダイナマイトのゴールシーンは感動させられること間違いなしです。

サッカーは最高。

映画も最高。

映画『92年の夏』トレーラー

投稿者プロフィール

タニヤマ ヒロト
タニヤマ ヒロトフォトグラファー
サッカー好きで映画好き。東京ガスのゴール裏からピッチのスポンサー看板裏に場所を変えて、毎週トーキョーの写真を撮りまくる青赤カメラマン。絵になる選手が大好き。好きな選手はバルデラマ。
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タニヤマ ヒロト
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POSTED COMMENT

  1. […] よく見ると袖口等にも同系色の模様が入れられているが、これはデンマーク代表がユーゴスラビアの代替出場した1992年のUEFA欧州選手権(※現 UEFA EURO)で優勝に輝いた際のシャツにインスパイアされたもの。(※この大会に関しては、フォトグラファーのタニヤマヒロト氏の映画紹介もご参考ください)色こそ違えど、印象的なストライプのグラフィックがしっかりと描かれているのがわかるだろう。デンマークサッカー史上最高の記憶をこの大会で再現するというデンマークの意気込み、そして代表チームに関わるすべての人々の想いをこれでもかと詰め込んだヒュンメル会心の1枚といえる。 […]

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