ユニフォーム

大マジメ?英アマクラブのスケスケ“世界最悪”ユニフォーム!

毎年開幕前になると必ず話題になるのが、新シーズンのユニフォーム。クラブにとっては貴重な収入源のひとつであるため、ファンからの評価は非常に気になるところだ。だが中には、あえて“世界最悪”の汚名をかぶりに行くという不思議なクラブも存在する。

通常ユニフォームといえば、クラブカラーやエンブレム、クラブの理念からインスパイアされたデザインになっているのがほとんど。いわばユニフォームはクラブの象徴であり、チームが1年間戦うための大事な戦闘服である。近年は若者が街中で着やすいポップなデザインが採用される傾向にあるが、前述の理由もあってか冒険的なものはやはり少ない。

アマチュアクラブ、ビデイルAFC。地元企業の大きな後押しのおかげで、テニスやスカッシュ、クリケットチームも運営する総合スポーツクラブに。

その中で、イングランドのノースヨークシャーにあるアマチュアクラブ(※リーグでいうと11部にあたる)、ビデイルAFCのユニフォームはここ数年の間でチャレンジを欠かしていない。そのきっかけとなったのは、地元食品会社『Heck Food』がクラブのメインスポンサーになってから。2017-18年シーズン、クラブが発表したユニフォームにはHeckの目玉商品であるソーセージで覆われていた。

2017年に発表されたソーセージ・キット。集合体恐怖症の方にはとにかくツラいデザイン。

クラブはその後も2018-19シーズンに“ホットドッグ・キット”、2019-20にはソーセージに加えマッシュポテトとグリーンピースをあしらった奇抜なユニフォームをたて続けにリリース。すると英BBCや他のフットボールメディアが、この風変わりなデザインをこぞって報じたのだ。小さな小さなアマチュアクラブの名前は、瞬く間に世界中に知られることとなった。

ホットドッグ・キットのシーズンでは、ユニフォーム効果か?リーグ優勝も。ちなみにGKジャージはBBQがモチーフ。
ホットドッグ・キット、ナンバーのフォントがソーセージの形。さらに首もとには“You’ll Never Pork Alone”の文字。意外と小ネタが多い!
英BBCの取材を受けるビデイルAFC。11部のアマチュアクラブに、世界中のメディアが注目している。
19-20シーズンはソーセージにマッシュポテトがプリント。GKはなぜかエプロン姿に。
このユニフォームでちゃんと戦っています。

2020-21はうって変わって、野菜タップリの“ヴィーガン・キット”(※Heckではヴィーガン向けのソーセージも販売している)を発表。毎シーズン話題となるおかげか、オンラインショップには世界中のサッカーファンからの注文が大量に集まり、そのたびクラブは追加生産を繰り返した。まさにうれしい悲鳴である。

ニンジンをモチーフにした2020年の通称“ヴィーガン・キット”。これはこれで奇抜なのに、ソーセージに比べるとパンチが弱く感じる不思議。GKのデザインはチーズなどを削るおろしガネ。

2017年、18年のソーセージユニフォームはそれぞれ、毎年ネットで行なわれる『今年の世界最悪ユニフォーム』でワースト7位、3位と大健闘(?)。ここまで注目を集めれば充分だと思うのだが、さらなる欲がでてきたのか。かつて「ワースト3内でフィニッシュしたいね」と冗談交じりに語っていたクラブの会長のマーティン・クームズだったが、2019年のシャツ発売の際にはBBCの取材に、1位獲得への執念をこう述べている。

今回“ワースト”に選ばれたらおしまい。(奇抜なデザインは)これで最後だ。

英BBC 2019年8月1日記事 “Bedale AFC unveil sausage and mash themed football kit for new season”より

しかし、ここまでカッコ悪さを追求しようとすると、心配になるのは実際に着る側の選手たち。さぞかし不満だろうと思うのだが?

最初の2枚のシャツを発表した後、選手たちは信じられないほど驚いてたね。「いやいや!それは着られないよ!」と言ってたが、(2019年の時は)「こいつはいいね!」って言ってたよ。彼らは悪名高くても注目される方を好むと思うよ。

英BBC 同記事より

と、クームズ会長。もちろんあくまで会長側の意見なので、どこまで選手の意見が通っているのかはわからないのだが…。(逆に、彼ら以上に世界最悪なユニフォームがあることが意外だし、しかも他の相手が全然ワーストを狙ってないだけに複雑…)

それにしても、なぜここまでクラブは(たとえ“最悪”という悪名でも)注目されることを望んでいるのか。この疑問への答えもまた、スポンサーであるHeckの意向が大きく関係している。

2014年に亡くなったスティーヴ・“ガービー”ガーベットさん(右)。クームズ会長とキーブル氏の共通の親友の死が、その後の慈善団体『Prostate Cancer UK』が設立のきっかけに。ガービーがファンだったリーズの人気バンド、カイザー・チーフスのチャリティライブなどで資金集めをした。

Heckの設立者であり共同経営者であるアンドリュー・キーブルは、実の父親と親友ガービーを前立腺がんでなくしている。また彼の息子も現在は快方に向かっているものの、25歳で早期の精巣がんを患っていた。イギリスでは男性の死因の1位と2位は前立腺がんと精巣がんによるもの。特に英国人男性の8人に1人、毎年47,000人が前立腺がんと診断されている。そこでHeckとビデイルAFCはユニフォームの売り上げを通じて、こうした病気の治療・研究の支援、検査の認知度向上のための慈善団体へ寄付を行なっているのだ。シャツが1枚でも多く売れれば、多くの寄付ができる。デザインの奇抜さに拍車がかかるのは、こうしたマジメな理由もあるのだ。

そして2021年、満を持してビデイルAFCが新作を発表した。世界初となるシースルー・ユニフォームの誕生だ。

世界初となるシースルーが売りの2021-22年モデル。とりあえずユニフォーム姿でトイレ行く時は、いつも以上に注意すべし。
左端、トレーニング用ジャージもまたシースルー。逃げ場なし。

10月の男性がん啓発週間に先立った『Let’s Be Clear』キャンペーンの一環であるこのユニフォームは、文字通り全面クリアに。胸スポンサー部分には「検診を忘れるな!」とあり、Heckがわざわざ“CHECK”に変えているという気合いの入れようだ。さらに強調するように股間部分へ矢印が伸びており、極めつけがソックスの「お前の前立腺を検査しろ!」と「お前の金◯を検査しろ!」の文字。シャツの強度が気になるところだが、宣伝効果はこれ以上ないほどだろう。

これまでのユニフォームは、地方のアマチュアクラブにも関わらず毎年数千ポンドを売り上げており、おかげで寄付金も累計20万ポンド(約3,000万円)に達している。今回の新作でクームズ会長は、「年末までに25万ポンドは行きたいね!」と意欲を燃やしている。

他人と差をつけたいあなた、ぜひ購入してはいかがだろうか。ただし着用のタイミングと場所を誤って通報されたとしても、当方は全く責任は取らないが。

Bedale AFC 公式】【Bedale ユニフォーム ※Historic Football Shirts webページ内】

投稿者プロフィール

KATSUDON
KATSUDONLADS FOOTBALL編集長
音楽好きでサッカー好き。国内はJ1から地域リーグ、海外はセリエAにブンデスリーガと、プロアマ問わず熱狂があれば、あらゆる試合が楽しめるお気楽人間。ピッチ上のプレーはもちろん、ゴール裏の様子もかなり気になるオタク気質。好きな選手はネドヴェド。
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