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【釣り記事】名古屋の新FWは釣り名人!!

Jリーグ・名古屋グランパスに新しく加入したポーランド代表FW、“クバ”ことヤクブ・シュヴィルツォク。来日して間もない天皇杯ベスト16・ヴィッセル神戸戦では、試合終盤に値千金の決勝弾をあげるなど、プレー内容も含めて早くも“本物感”を漂わせている。一方で、彼を表現する言葉は、現地メディアを見てもなかなか少ない。 「EURO2020にも出場した現役ポーランド代表」、「レヴァンドフスキの相棒」、「道端に倒れていた老婆を救った好青年」、そして…「無類の鯉釣り好き」??

地元近くの古豪ビトムの下部組織からトップ昇格を果たしたシュヴィルツォク。18試合12ゴールという抜群の得点能力を買われて、20歳でドイツのカイザースラウテルンに移籍を果たした。が、出場機会に恵まれず、ポーランド国内クラブを転々としていった。大きな転機となったのは2018年、ブルガリアに渡ったことで彼の人生は大きく変わる。前シーズン、たった半年間25試合で17ゴールというハイペースっぷりが認められ、強豪ルドゴレツ・ラズグラドと長期契約を結ぶこととなった。

ブルガリアの強豪クラブ、ルドゴレツ・ラズグラドに100万ユーロで移籍したシュヴィルツォク。

2020-21シーズンこそ古巣であるポーランドのピアスト・グリヴィツェにレンタルされたものの、ここでも23試合15ゴールと驚異的な数字を叩き出している。これはエクストラクラサの得点ランキング2位の得点数であり、この活躍からポーランド代表監督であるパウロ・ソウザは彼をEURO2020のメンバーに選出している。クシシュトフ・ピオンテク(ヘルタ・ベルリン)の怪我があったとはいえ、海外組を重用するソウザ監督が国内リーグからアタッカーを連れていったのは、ポーランドでもかなりの驚きだったようだ。

EURO2020ではロシア戦に先発出場、先制点をあげている。得点後はおなじみのポーズでゴールセレブレーション。

今までユースでもA代表でも選ばれた経験があり、国内でもしっかりと結果を残しているとはいえ、地元メディアからすれば選外から現れた“シンデレラストーリー”だ。さらに彼の同郷、アルカディウシュ・ミリク(マルセイユ)がEURO2020本大会直前に離脱。代表におけるクバの重要性が高まると、現地メディアはこぞって特集を組むようになる。

「シュヴィルツォクってどんな奴だ?」

だが、ストイックで真面目な性格のクバ。海外組の選手たちの様に、メディアが喜ぶような私生活など漏れ出てこない。かろうじて出てきたエピソード、それが本編冒頭にも語った“鯉釣り”にハマり過ぎているという、なんともシブ〜い趣味なのだ。彼のSNSをのぞいてみると、出てくる写真は巨大な鯉を抱えてご満悦な様子ばかり。

本当に鯉なのか?と疑ってしまうほど巨大な獲物を釣りあげて笑顔のシュヴィルツォク。

24kgの鯉を釣りあげたのがこれまでの記録、とシュヴィルツォク。今1番の悩みは、趣味とサッカー選手の生活サイクルがなかなか合わないという事らしい。それでも休暇先に釣りのポイントがあれば、時間を見つけて出かけて行くようだ。

3日間の旅行なんて行く暇はありませんが、1日オフがあれば出かけますね。休みがあれば、何も考えずに釣り道具を持って水辺へ向かいますよ。(釣りを始めたきっかけは?)小さい頃は祖父と一緒に釣りに行っていましたが、その時は浮き釣りでした。競技会にも行きましたよ。

『UNDERCARP』インタビュー記事より

さらにクバの友人の証言を。かつてピアスト・グリヴィツェでチームメイトだったスペイン人MF、ジェラール・バディアだ。シュヴィルツォクと別れたあとにスペインのアスコーへ移籍した彼に、ポーランドの地元メディアが聞いている。

釣りがクバの休息とリラックスの仕方なんだ。ほとんどの人間はだいたいクラブづてにスポーツ用品を手に入れるんだけど、クバの場合は釣り道具。俺がいま住んでる所(※スペイン・カタルーニャ州アスコー)にはフィッシングにピッタリな場所が少なくないからね。スペインまで会いに来いよって、彼に言ったんだ(笑)

『Super Express SPORT』記事より

『karpiolog』によるEURO2020直後に行なわれたシュヴィルツォクの釣り動画。もしかするとサッカーメディアの取材より彼の人柄が知れるのは、釣りメディアなのかも??

しかし、なぜポーランドで鯉なのか?

実はポーランドだけでなく、ドイツやチェコ、オーストリアやハンガリーといった周辺国では、クリスマス時期に最もポピュラーな魚である鯉を食べる風習がある。地域によっては年末であったり、または特定の月に、といった具合に多少食べるタイミングは異なるのだが、元々は8世紀ごろに一帯を治めていたカール大帝が鯉の養殖を強く推し進めたことが一般化した始まりとされている。

ポーランド伝統、クリスマスの鯉料理の数々。画面正面の料理が『カルプ・フ・ガラレチェ(鯉のゼリーよせ)』。

クリスマスといえばチキンと思われるかもしれないが、カトリックではクリスマス時期に食肉を控える古いしきたりがある。特に修道院では断食の際の貴重な食材として鯉が重用されていたとのこと。そのため伝統的な魚料理として、鯉のフライや鯉のゼリーよせといったものが、この時期の食卓の定番とされている。鯉は真空パックでも売られているのだが、より新鮮な物を食べたいという人々は値が上がるクリスマス・イブ前に、鯉を生きたまま購入する。そして泥吐きも兼ね、数日間は自宅のバスタブで飼う。これがポーランドスタイルのクリスマス準備、なのだ。

鯉をバスタブで飼っている様子。その間お風呂は?という疑問がわくが、そこは大丈夫。ポーランド人は冬場、毎日シャワーを浴びなくても平気…らしい。

鯉から話を戻そう。

シュヴィルツォクの活躍を受け、ローン先のピアスト・グリヴィツェは買取オプションを行使し完全移籍で獲得。クラブは今が1番の売り時と考えたのだろう。ロシアやトルコのクラブから注目を集める中、獲得した翌月には名古屋へ売却し、しっかり100万ユーロ(約1億2,800万円)の利益を得た模様だ。

市場での値段こそ選手の価値。海外クラブのしたたかさはともかく、金額と実績を考えれば今がキャリアのピークと言えるシュヴィルツォク。今後の名古屋での活躍も大いに期待できるはずだ。日本向きの真面目でポジティブな性格に加え、名古屋近郊に大きな鯉が釣れるポイントさえあれば、彼の成功は間違いない。

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KATSUDON
KATSUDONLADS FOOTBALL編集長
音楽好きでサッカー好き。国内はJ1から地域リーグ、海外はセリエAにブンデスリーガと、プロアマ問わず熱狂があれば、あらゆる試合が楽しめるお気楽人間。ピッチ上のプレーはもちろん、ゴール裏の様子もかなり気になるオタク気質。好きな選手はネドヴェド。
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