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サイトもダウン!?アヤックス、大人気3rdユニフォームに込められた意味

オランダの名門クラブ・アヤックスは、2021-22シーズン用の3rdユニフォームをリリースした。あまりの人気のためにクラブのウェブサイトをダウンさせたという新作シャツは、黒地に赤・黄・緑のラスタカラーがアクセントとなった、“レゲエの神様”ボブ・マーリーへのリスペクトがつまった1枚となっている。フットボールにレゲエ?この取り合わせ、実はまったく意外ではないのだ。

なぜアヤックスがボブ・マーリーとコラボをしているのか。そのヒントはシャツの首元にある。アムステルダムの市章(※3つの×。実際は“セントアンドリューの十字架”と呼ばれる物で、歴史的に街を襲った3つの大災害…『洪水』『火災』『黒死病』を意味すると言われている。理由は不明。)の上にとまる、ラスタカラーの3羽の小鳥たち。これでピンと来る方は、間違いなく音楽好きだろう。

ラスタ調に仕上がった2021-22シーズンのアヤックス3rdユニフォーム。
アディダスの、アヤックス3rdユニフォームのPR動画。同時にシャツ同様の3羽の小鳥を踵部分にあしらった、ラスタカラーの『Samba』もリリースした。
あのアーセン・ヴェンゲルも大ファン、ボブ・マーリーの1980年に行なわれたロンドン・クリスタルパレスでのライブの様子。これが彼の最後のライブとなった。

3rdユニフォームのPR動画で流れている曲は、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの1977年発売のアルバム『エクソダス』収録の『Three Little Birds』。そう、首元の3羽の小鳥はこの曲が由来なのだ。

ボブ・マーリーの名曲、『Three Little Birds』。実はアヤックスファンにとっては、定番チャントのひとつでもある。

 Singing, don’t worry about a thing

 (歌おう、何も気にすることないんだ)

 ‘Cause every little thing is gonna be alright

 (どんなこともみんなうまくいくさ)

改めて2020年に作成されたMV。3羽の小鳥、はバックコーラスを担当していた女性トリオ“アイ・スリー ”を指しているとも言われている。

平和と愛の大切さを訴え、差別や抑圧と戦った彼の音楽には、時には牧師のように諭し、時には仲間たちを奮い立たせるような楽曲が多い。その中でも『Three Little Birds』は、とくに穏やかで寄り添うような曲と言える。ホームであるヨハン・クライフ・アレナを包む多幸感あふれる独特な雰囲気は、アヤックス好きでなくとも一見の価値アリだ。

スタジアムにはボブ・マーリーゆかりのバナーやフラッグも。
アレナで歌われる『Three Little Birds』。歌詞も含め、意外とフットボールにぴったりの曲であることに驚く。レゲエ版の“You’ll never walk alone”とも言えるのでは。

きっかけとなったのは2008年7月。ウェールズのカーディフ・シティの当時のホームスタジアム、ニニアン・パークでのこと。カーディフvsアヤックスのプレシーズンマッチ後、地元ファンとの衝突を危惧した警察の指導により、数百人のアヤックスファンはホームチームのファンが退場するまで、スタジアムでの待機を余儀なくされていた。なかなかスタジアムから出られず不満は爆発寸前。そこにカーディフのスタジアムDJ、アリ・ヤシンが流し始めたレゲエの曲の数々が雰囲気を変えた。すっかり退屈していたアヤックスファンは、一転して大盛り上がり。『Three Little Birds』はその中の1曲であり、以降アヤックスにとって重要なアンセムとなっていった。

2008年、親善試合後にカーディフのスタジアムで流れた『Three Little Birds』、そして大合唱のアヤックスファン。
カーディフのスタジアムDJ、アリ・ヤシン。彼のアイディアがなければ、アヤックスファンに歌い継がれることはなかった。

以前の記事(※“なんで?イスラエル国旗がアヤックスファンに掲げられるワケ”をご参照ください)で紹介した通り、様々な人種や文化が同居する“ヨーロッパのニューヨーク”アムステルダム。ダンスミュージック天国とも言われており、レゲエもまたアムスっ子たちにとってはポピュラーな音楽のひとつ。(大麻が合法という自由な街、ということも影響しているのだろうが)“功労者”アリ・ヤシンはアヤックスのファンサイトのインタビューに、当時のことを振り返ってこう答えている。

レゲエバンドでギターを弾いていた私は、もちろんトータルフットボールの影響もありますが、アムステルダムという街がレゲエを愛していることもあり、美しいクラブとしてアヤックスを気にしていました。我々カーディフがアヤックスと親善試合をすると知ったあと、できるだけスタジアムでレゲエをかけようと思ってました。

アヤックスファンサイト『Vak410.nl』のインタビューにて
優れたセントラルミッドフィルダーだったというボブ・マーリー。(※中央)彼の最初のアイドルはペレであり、ブラジル代表がお気に入りだったという。

ツアーの合間に暇を見つけては試合をしてたというほど、大のサッカー好きとして知られるボブ・マーリー。ガンにより36歳という若さで亡くなったレゲエの神様だが、サッカーの試合でのケガが原因というのはなんとも皮肉なことだ。残念ながらマーリー本人がスタジアムの雰囲気を味わうことは叶わなかったが、彼の息子でありシンガーであるキマーニが、チャントの評判を聞きつけてアムステルダムに2度…2012年、そして2018年に訪れて父の名曲を披露している。

私の父はサッカーの大ファンでした。サッカーと音楽は密接に関係していました。エネルギーとヴァイブレーション…私はこの日この場所で感じた物を決して忘れないでしょう。 アヤックスこそ私のチームです!

2018年9月、チャンピオンズリーグのグループステージ、AEKアテネとの試合で催されたキマーニのライブ。

またマーリーの娘、セデラはこう語っている。「アヤックスのファンに愛されているというエピソードは私の心を温かくし、Three Little Birdsのような曲がいかに影響力があるかを感じさせられました。父にとってサッカーはすべてでした。そして、父の言葉を借りれば、“サッカーは自由”です。」

曲や歌詞の内容のみならず、権力や抑圧と戦い続けた姿勢は、亡くなってもなお大きな影響を与えているボブ・マーリー。アヤックスファンはもちろんのこと、今後も世界中のスタジアムで歌われることだろう。

アイルランド・ダブリンのチーム、ボヘミアンFCの2019年にリリースされたアウェイシャツ。当初はマーリーが描かれていた(右)が、肖像権の関係で修正を余儀無くされた。(左)
MLSのLAFCファンがスタンドに掲げたマーリーのティフォ。こちらはマーリーのもう1人の息子、ジギー・マーリーがスタジアムに訪れている。

投稿者プロフィール

KATSUDON
KATSUDONLADS FOOTBALL編集長
音楽好きでサッカー好き。国内はJ1から地域リーグ、海外はセリエAにブンデスリーガと、プロアマ問わず熱狂があれば、あらゆる試合が楽しめるお気楽人間。ピッチ上のプレーはもちろん、ゴール裏の様子もかなり気になるオタク気質。好きな選手はネドヴェド。
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