文化

Z世代の新常識!!TikTokで話題沸騰、『ブロークコア』って何!?

リーバイスのストレートジーンズにアディダスのスニーカー、そして年季を感じさせるレトロなユニフォーム。スタジアムやパブなどでよく見かける典型的フットボールファンのいでたちだが、これらがいまZ世代から大人気のファッションスタイルといったら、みなさんは驚かれるだろうか。我々にとってはなんら珍しくもない格好が、いまやフットボールクラブやユニフォームサプライヤーにまで影響を与えようとしている。「明日から知ったかぶりで話せる」トレンド、Z世代の親・ジェネレーションXの皆さんも覚えておいて損ナシ!?

主にイギリス圏で使われる「一般男性」を意味するスラング『Bloke(ブローク ※転じて奴、野郎などの意味もある。アメリカ英語ではguyがこれにあたる。)』と、ネットから生まれたトレンドに付けられる接尾語としてよく用いられる『Core(コア ※元々は核、熱狂と訳される。)』を合わせた造語『Blokecore(ブロークコア)』。その流行のスタートはハッキリとわかっておらず、おそらく近年日本でも定着しつつある親世代ファッションを現代風にアレンジしたスタイル、『Dadcore(ダッドコア)』の延長線上にあるものだとされている。

昨今の1990年代リバイバルという大きなうねりの中、このアメリカから生まれた“イギリス中年オヤジファッション”のステレオタイプに名称がついたのは、実はごく最近のことである。2021年12月、アンテナ感度高めの若者たちによるニッチな現象に、アメリカのTIkTokerであるブランドン・ハントリーがブロークコアと名づけたことで大きく火がつき、TikTokなどのSNSを介しアメリカのみならずヨーロッパなど世界中へと拡散。「身内同士の単なる冗談」というハントリーの何げない投稿によって生まれたブロークコアという言葉は、Z世代の若者たちのホットワードに躍り出たのだ。今ではフットボールの専門サイトである『Goal.com』の英国版でさえ、『この夏に着たい、レトロ&モダンユニフォーム20選』という記事を掲載するほど大盛況となっている。

TikTokに毎日投稿されるブロークコアの数々。名付け親のハントリーは、サッカーのことを語るイギリス人YouTuberに影響を受けた、とのこと。このZ世代による“フーリガンスタイルの(あくまで表面的ではあるが)追体験”、オフサイドが何か知っているかどうかはあまり関係ないようだ。
TikTokerのLukas Ludwigによるブロークコアの解説動画。

スポーツという枠を超え世界中に愛されるフットボールではあるが、近年は若者のスタジアム離れが危ぶまれている。依然eスポーツなど若者のフットボールへの関心が衰えていない一方で、リーグによっては観客の平均年齢の上昇に大きな危機感を持っているのも確かだ。例えばコロナ禍の影響を受ける直前、2019年1月にJリーグが発表した2018年シーズンの『観戦者調査サマリーレポート』によれば、Jリーグの観客の平均年齢は41.9歳。そのうちZ世代のサポーターは1割ほどだ。(※日本国民の平均年齢は47.3歳。)さらに深刻なのがプレミアリーグで、こちらの市場規模は世界No.1であることは言うまでもないが、観戦者の平均年齢だけで見ればJリーグとほぼ同じ結果。(※41歳。ちなみに英国民の平均年齢は40.3歳)主に歯止めがかからないチケット代の上昇が、若者たちの観戦を妨げる要因となっている。

そうした中で入場料収入と並ぶグッズ収入、とくにユニフォームが売れるかどうかはチームには死活問題。新たな若い購買層を模索するために、シーズンごとに発表されるユニフォームのデザインもストリートファッションに歩み寄ってきている。にもかかわらず、売り上げはかんばしくない。高価格、コピー商品の蔓延、そして新型コロナによるロックダウンと、ここ数年は逆風が吹き続けている。では、対してブロークコアはどうだろうか。

「(着るシャツは)見栄えを良くするにはイギリスのクラブ、できればチャンピオンシップより下のクラブである必要があるんだ。本物のギーザーたち(※ちょっと変わったジイさん、の意)が試合中に酔っ払ってる姿を見ることができる格好の場所だからね。」(※Shift 5月22日記事『Blokecore: the football away days style』より)

前述のハントリーがこんなこだわりを語っているように、スタイルに必要な個々のアイテムは父親のクローゼットを探ればタダで手に入りそうなものばかり。家になかったとしても、わずかな時間ebayあたりを検索すれば一式揃えるのに8,000円もかからないだろう。前シーズンとほんのわずかな変更で一新されるユニフォームより、若いサッカーファンの興味は安価で個性的なヴィンテージにあるのだ。

1990年代の輝かしい“クール・ブリタニア”の象徴のひとつ、オアシスのギャラガー兄弟。愛するクラブ、マンチェスター・シティのレトロシャツを羽織る彼らは、Z世代のロールモデルでもある。

2022年6月現在、TikTokで再生されているブロークコア関連動画は約1億2,500万回再生。また彼らのスタイリングにおいて最もポピュラーなスニーカーであるアディダス『サンバ』は前年比152%と売上げを上昇させている。いまだにebayではヴィンテージユニフォームの売買が盛んにおこなわれており、ファッションアイコンとして世界的に有名な米ラッパーのA$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)は自身のMVにて、エリック・カントナのシャツを着た姿を披露している。ファッション界ではサッカーユニフォームが現在のロックTシャツ同様、一般に定着するのではないかという見方もされている。

その一挙手一投足が注目されるエイサップ・ロッキー。現代の歌姫として知られるリアーナのパートナーとも知られており、良くも悪くも常にメディアを騒がせる存在であり、若者たちの憧れの存在でもある。

サプライヤーもこの流行に敏感に反応しており、若者たちの注目を集めるような90年代風デザインを新作シャツに反映させている。ファッションニュースサイト『FASHIONSNAP.COM』6月25日記事でも触れられている通り、2022-23シーズンの新作ユニフォームのいくつかは、ながらく廃れていた“袖付き”が復活。とくにadidasがサプライヤーを務めるレアル・マドリード、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドにも懐かしいデザインが戻ってきた。また襟付きではないものの、2007-08シーズンの古いテンプレートを想起させるACミランや1960年代を意識したマンチェスター・シティなど、メーカーに関係なくヴィンテージに負けないレトロ感漂う新作キットを続々発表している。

久々に襟が復活したマンチェスター・ユナイテッドの2022-23シーズン1stキット。90年代初頭のアウェイキットから着想を得た襟元のデザインや、エンブレム周りのデザインが特徴的。
JAKOもシュツットガルトの新シーズンキットに襟付きを復活させた。こちらはadidas製の1997~99年に使用していたアウェイシャツのデザインをほぼ受け継ぐものとなった。(※画像:FOOTY HEADLINESより)

ヴィンテージシャツ販売を専門におこなう『Classic Football Shirts』(CFS)の共同創設者であるDoug Biertonは、サプライヤーにとっての大きな転機は2018年にあったと語る。NIKEが94年のアメリカ・ワールドカップでのシャツをオマージュしたという、ナイジェリア代表のロシアW杯用1stキット。発表されるやいなや、ナイジェリアサッカー協会には300万件以上の予約注文が殺到し、発売日には(ナイジェリア人サポーターではない)熱心なサッカーファンがロンドンのナイキストアに長蛇の列を作ったものだ。

「前回のワールドカップにおけるナイジェリア代表のシャツの成功は、サッカーシャツがトレンドがその後どのようになったかを示している。実際に買い手がサッカーファンかどうか、サッカーシャツが好きかどうかは関係ない。そして​​クラブは現在このアイデアを再現することで、次のナイジェリア代表になろうとしているんだ。」(※The Set Pieces. 記事『RETRO FOOTBALL SHIRTS: WHY VINTAGE KITS ARE RIGHT ON TREND』より)

Z世代のみならず、彼らの親でありジェネレーションXとも呼ばれた世代にも響くであろうファッショントレンド、ブロークコア。若者のフットボール離れだけでなく、新たな市場を切り開く救世主となるかもしれない。

サッカーファン以外も巻き込んだ、2018年ロシアW杯用のナイジェリア代表ユニフォーム人気。それまでハイテクに拘っていたメーカーが、今につながるトレンドを見出したきっかけとなる“事件”だった。
ヴィンテージユニフォーム市場の盛り上がりも相まって、売り上げ好調のCFSのメンバー。ヨーロッパだけでなく、南米はもちろんJリーグ、フランスW杯の日本代表のユニフォームも人気が高いという。

ちなみに前述のBiertonは、今の“売れ筋”が保存状態の観点から80年代のシャツから90年代のものに移ってきているとも語っている。

「今のトレンドは90年代、とくに90年代半ばのシャツなんだよ。たとえばNIKE時代のボルシア・ドルトムント、胸スポンサーがSONYだった頃のユヴェントス、カールスバーグを付けたリーボック時代のリバプールとかだね。」(※The Set Pieces. 記事『RETRO FOOTBALL SHIRTS: WHY VINTAGE KITS ARE RIGHT ON TREND』より)

皆さんもたまには、家のクローゼットの奥を覗いてみてはいかがだろうか。思い当たる節がある方は、ぜひ取り出して欲しい。あなたがタンスの肥やしにしか思わなかった物が、実は最新ファッションアイテムかもしれないのだから…??

投稿者プロフィール

KATSUDON
KATSUDONLADS FOOTBALL編集長
音楽好きでサッカー好き。国内はJ1から地域リーグ、海外はセリエAにブンデスリーガと、プロアマ問わず熱狂があれば、あらゆる試合が楽しめるお気楽人間。ピッチ上のプレーはもちろん、ゴール裏の様子もかなり気になるオタク気質。好きな選手はネドヴェド。
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