世界中で読まれているサッカー漫画の金字塔、『キャプテン翼』。個性的なキャラクターぞろいの作品中で特に印象的なのが、奇想天外の空中連携技“スカイラブハリケーン”で有名な、政夫&和夫の立花兄弟だろう。今回は日本から遠く離れた南米から「もし実写版・キャプ翼やるなら、彼らがオススメ」??“パラグアイの立花兄弟”と呼ばれる人気の双子選手、オスカルとアンヘルのロメロ兄弟を紹介する。
ご存知のない方に一応説明すると、立花兄弟とは『キャプテン翼』の小学生編から登場する秋田県代表・花輪SS所属の双子選手、立花政夫と立花和夫のこと。中学生編では花輪中に進学し、空中サッカーの申し子とまで呼ばれた2人の代名詞となった大技“スカイラブハリケーン”は、当時のサッカー少年たちなら一度はプールなどで試してみたものだ。(まぁ、結果はたいがい散々なものだったが…)

その立花兄弟、なんと地球の反対側にある南米の地・パラグアイに実在するのをご存知だろうか。“パラグアイの立花兄弟”と呼ばれる代表選手、双子のオスカル&アンヘルのロメロ兄弟だ。
名門、セロ・ポルテーニョでキャリアをスタートさせた2人にとって、キャリアの大きな転機となったのは2013年。監督に就任した元・ガンバ大阪のチキ・アルセが若手を積極起用したおかげで、兄弟は数多くの試合で自らの武器を磨くことができたのだ。またクラブが財政難に陥っていたため、下部組織から選手を多く登用せざるを得なかったという事情も若い彼らには追い風となった。

最初に頭角を表したのは、攻撃的MFの兄・オスカル。セロで初めてのタイトルを獲得すると、活躍が認められて23歳の時にアルゼンチンのラシン・クラブに。序盤こそ目立たなかったが徐々に能力を発揮、ラシンの中心選手へと成長するとバレンシアやインテルといった欧州クラブから注目を集めるようになる。だが、周囲の予想に反し新天地に選んだのは、当時選手を“爆買い”中だった中国。上海申花では外国人枠の関係で2年間スペインのアラベスへレンタルに出されたが、その後2年は中国に戻って超級リーグで戦っている。またパラグアイ代表として2018年、ロシアW杯前の親善試合で日本と対戦しており、ボレーによる先制点をマークしている。

一方、主にFWを務める弟のアンヘルは兄と同様に23歳の時にセロを離れ、ブラジルの名門であるコリンチャンスへの移籍を果たしている。鳴り物入りでの入団となったが、当初はなかなか先発の座を掴むことはできなかった。だが得点能力の向上とともにクラブに欠かせない選手へと変貌していくと、以降コリンチャンスの攻撃陣を牽引。チームのパウリスタ州選手権とブラジル全国選手権、それぞれ2度のタイトル獲得に貢献した。とくに2017年の州選手権決勝では、彼のゴールがチームを優勝に導いている。そしてアンヘルの代表での活躍で目新しいのは、コパアメリカ2021のグループステージ初戦、ボリビア戦での圧巻の2ゴールだろう。結果、この貴重な勝ち点3がグループステージ敗退からパラグアイを救うこととなった。

そして2019年、兄弟の絆の強さが成せるワザなのか。オスカルとアンヘルは再びアルゼンチンの人気クラブのひとつ、サンロレンソで再び2人は出会うことに。もちろんパラグアイ代表に名を連ねる2人の入団の様子は盛大に報道され、特にアルゼンチンでも大人気『Oliver&Benji』(※海外版キャプテン翼。名前も海外仕様になっており、タイトルは『翼と若林』の物語中の名前からとられている。)のキャラを彷彿とさせる彼ら兄弟は、当初よりファンから多くの人気と期待を集めることとなった。
それにしても、兄弟がそろって所属していたのがセロとサンロレンソ。どちらも“エル・シクロン”(※サイクロンの意)という愛称を持つチーム同士だ。さらにこの2人、スカイラブハリケーンが得意な立花兄弟に重ねられるというのは、なんともできすぎた話ではないか。(実際“ハリケーン”を意味するのはウラカンで、むしろサンロレンソのライバルではあるのだが、そこは目をつぶっていただきたい)


時は流れ、華々しい入団発表から2年あまり。今やチームの顔となっているロメロ兄弟だが、残念ながら所属クラブでの活躍はトーンダウンしている。チームは現在、後期リーグ6試合終わって16位(※執筆時点)と低迷しており、特に攻撃陣の早急なテコ入れが必要とされている。そのため彼らの契約は2022年6月までとなっているが、クラブは近々兄弟のどちらか、または両者の放出を考えていると言われている。実際クラブの会長であるホラシオ・アレセイゴールも、カタールW杯終了までに契約更新する意図はあるが、と前置きした上で「重要なことは、2人一緒である必要はないということだ。彼らが将来ずっと共に旅する訳ではないんだ。どんな申し出にも耳を傾けるつもりだ。」と、地元メディア『TyCSports』の取材に答えている。まだ噂の段階ではあるが、すでにメディア上にはいくつかのクラブ名もあがり始めており、それぞれ200万ドル(約2億円)、両者一緒の場合はあわせて350万ドル(約3億8千万円)という売却額についての報道も飛び出す始末だ。
いずれにせよ、ロメロ兄弟のアズルグラナでの時間はあとわずかのように見える。彼らが残りの期間でスカイラブハリケーン…は無理だとしても、あの技のようにとびきり大きなインパクトを残して大逆転残留、はたまた他クラブへの大きなオファーを勝ち取ることができるか気になるところだ。
ところでJリーグクラブの皆さん、物は相談なんですが。話題作りにパラグアイ代表選手、いかがですか??
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